平田ファーム

私は、横浜市青葉区に土づくり(野菜くずや野菜の葉、茎に米ぬかを入れて2年以上経過した腐葉土を使用)から自分でやり安全な種を使った無農薬の野菜を作っています。

私が29歳の時に二人の息子を残して、突然主人が無くなりました。当時、主人の両親、息子2人と5人の生活を支える必要に迫られました。

直ぐに仕事を見つけて働きましたが、収入が少なく更に別のアルバイトをして、それでも足りないので空き時間に内職までやりました。とにかく生きる為に働く必死の生活です。余裕も無いために遊んだこともありません。

そうして、無理に無理を重ねながら働いているうちに体調不良になりました。病院に行くと末期の癌でした。絶望的な状態でしたが、奇跡的に生還する事が出来ました。

このような無理に働き続ける生活は出来ないと思いました。そして私には何の資格も無いためにとにかく肉体を酷使して働くしかない現実に気が付きました。

39歳の時に長男の大学受験がありました。そこで一念発起して私も大学に行き良い職業に就こうと思い長男と一緒に受験勉強を始めました。当然働きながらの勉強なので時間が取れません。通勤途中、仕事の合間など少しの時間を見つけては集中して勉強をしました。ついに東京大学に受験可能な実力を身に付けるまでになりました。結果、私は東京大学に合格しました。39歳の大学生で、しかも余裕は無く授業が終わると走って仕事場に向かう毎日でした。友達を作る余裕もありませんでした。

私が大学3年生の時に、ある大学の教授に声をかけて頂き、その教授のお手伝いをしました。それが縁で私は卒業後にその大学の講師になる事が出来ました。講師で頂けるお給料はこれまでで最も多いもので、1つの仕事に専念する事が出来ました。大学では人類学と統計学を教えていました。60歳を過ぎて大学で教鞭をとるかたわら、自分が何故癌に侵されたのだろうかと考えるようになり独学で農業の事を勉強しはじめました。実践する必要を感じ自分で畑を借りて野菜を育てるようになりました。

70歳で大学を定年退職してからは、本格的に農業に打ち込むようになりました。

現在の農業は利益の効率化が優先されています。野菜の大きさ、形を均一にする事、育成スピードが同じになる事や消費者が見栄えの良い野菜をどうしても好むためにそれに合わせる必要が出てきます。

その為に、F1種が産まれました。
F1種は、これまでの固定種と異なり、農業の近代化に合った種です。発芽、生育、収穫が同じ時期になります。また味や形が均一に出来るので、とても効率的です。大量生産に適しています。

ところが、F1種は、生命力として弱さがある為に、どうしても沢山の化学肥料が必要となります。その化学肥料により雑草や虫が発生する為に農薬も必然的に沢山使用する事になります。

もっとも怖いのは、化学肥料や農薬に含まれている硝酸態窒素が土に過剰に溜まり、それをF1種の野菜が吸い上げます。その野菜を食べた人間の身体に入ってきます。身体に入った硝酸態窒素は、亜硝酸窒素という物質に変化して、それがタンパク質と反応することでニトロソアミンという成分が出来ます。そのアントロソアミンが強力な発癌作用を持っています。

つまり、現在ほとんどの野菜はF1種の種を使用して、それにより大量の化学肥料と農薬を使わざると得ない状況にあります。それを摂取する人間の身体に発癌作用のある物質を取り込んでしまいます。

農業を研究している内にそのような事がわかるようになりました。わからない時は国会図書館まで資料を閲覧に行った事もあります。

私は、固定種、またはその種で出来た作物から翌年の種を取って野菜を育てています。しかし3年続けてその種を使うと発芽しなかったり、生育が悪かったりします。現在固定種の種を扱っている種屋さんは非常に少なく、また非常に高くなっています。

また、腐葉土作りも2年がかりで、自分で作ります。私が育てた野菜くず、野菜の葉、茎に米ぬかを入れます。時に炭、蠣やホタテの貝殻も入れます。
また、雑草も農薬を使わずに地面を這うように取り除いています。害虫も農薬ではなくて、お酢から作った溶液を使っています。本当に、時間と手間がかかります。

しかし、安全で安心な野菜をほんの一部でも取り入れる事が出来るようになれば良いと思い自分で野菜を作る事で啓蒙活動をしています。

固定種だとどうしても、これまで見ている野菜の形とは違った物が出来ます。旬の季節の野菜しか生育出来ません。しかし、その素晴らしい味と安全で安心なとても手間がかかった野菜を食べて頂きたく思います。

私が研究を始めて13年が経過しました。その私の畑の野菜をこのハレイワハッピーマーケット カフェのスープやサラダに使って頂き、皆様方に食べて頂く機会を得る事が出来ました。

是非、固定種で、時間と手間をかけた安全で安心な野菜について、少しでも考えて頂けたら私にとってこれ以上幸せはありません。

なおこれによって得た収入の全ては盲導犬協会に寄付をしていることを付け加えます。
平田清恵